AWSを活用するWebサービス企業にとって、インフラの安定運用は事業成長の要です。
クラウドサービスの普及に伴いAWSの重要性は増していますが、「AWSの専門知識をもつインフラエンジニアが不足している」「AWSに強い人材の採用活動が難航している」といった悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。
本記事では、現役のAWSインフラエンジニアである筆者が、AWSを扱うインフラエンジニアの具体的な仕事内容と、求められるスキルを詳しく解説します。
さらに、AWSに強いインフラエンジニアの採用方法についても紹介します。理解を深め、最適な人材確保にお役立てください。
インフラエンジニアにAWSのスキルが求められる背景
ビジネスのデジタル化が加速する現代において、ITインフラは企業の競争力を左右する重要な要素となっています。
そのITインフラの中核を担うクラウドサービスの重要性はますます高まっており、クラウドスキルを持つインフラエンジニアへの需要も急増しています。
特にAWSは市場をリードするクラウドプラットフォームとして多くの企業で採用されているため、AWSに精通したインフラエンジニアの存在価値が高まっています。
関連記事:インフラエンジニアの需要が高い理由と優秀な人材の獲得方法を解説
クラウド環境の普及とオンプレミスの縮小
以下のグラフは、IDC Japan株式会社が2024年9月に発表した2023年〜2028年の国内パブリッククラウドサービス市場予測です。
この予測データによると、国内のクラウドサービス市場は堅調に成長を続けており、多くの企業がオンプレミス環境からクラウド環境への移行を進めています。
この流れに伴い、クラウド環境の構築・運用を担うインフラエンジニアの需要はますます高まっています。
オンプレミス環境ではハードウェアの管理や保守が中心でしたが、クラウド環境では仮想化技術や自動化ツールなどを活用した運用が求められるため、クラウド特有のスキルセットが重要になります。
AWSはパブリッククラウドサービスのトップシェア
以下のグラフは、Synergy Research Group社が2024年2月に発表した、2023年第4四半期までのグローバルにおけるクラウドインフラのシェアを表しています。
このグラフによると、AWSはパブリッククラウドサービス市場においてトップシェアを誇っています。
多くの企業がAWSを採用しているため、AWSの運用経験をもつインフラエンジニアは安定したシステム運用やコスト最適化、ひいてはビジネスの成長にも欠かせない存在となっています。
AWS特有の設計・運用スキルが求められる
AWSは多様なサービスを提供しており、それらを効果的に組み合わせることで柔軟かつスケーラブルなシステムを構築できます。
しかし、その反面、AWSのサービスを適切に設計・運用するためには、AWS特有の知識やスキルが不可欠です。
例えば、AWSの各サービスの特性や料金体系を理解したうえで以下のような能力が求められます。
- 最適な構成を設計する能力
- セキュリティを考慮した運用を行う能力
- 障害発生時の迅速な対応能力
これらのスキルを持つインフラエンジニアは、AWS環境を安定的に運用し、ビジネスの成長に貢献できるため企業にとって貴重な存在となります。
AWSにおけるインフラエンジニアの仕事内容
AWS環境において、インフラエンジニアの業務は多岐に渡ります。
ビジネス要件の理解から、設計・構築・運用・保守、そしてコスト管理まで幅広い知識とスキルが求められます。
要件定義
プロジェクトの初期段階において、インフラエンジニアはビジネス要件を深く理解し、システム要件へと落とし込む必要があります。
具体的には、必要なパフォーマンス、可用性、セキュリティレベル、予算などを考慮しながら最適なAWSサービスの組み合わせを検討します。
関係者との綿密なコミュニケーションを通じて、システムの目的や目標、制約条件を明確にすることがその後の設計・構築プロセスを成功させる鍵となります。
設計
要件定義に基づき、インフラエンジニアはAWS環境の具体的な設計を行います。
ネットワーク構成・サーバー構成・データベース設計・セキュリティ設計など、多岐にわたる設計作業を担います。
また、可用性や耐障害性、セキュリティ、パフォーマンスを考慮しながら最適なアーキテクチャを設計することが重要です。
設計段階では、将来的な拡張性や変更容易性も考慮に入れ、クラウドだからこそ可能な柔軟なシステム設計を目指します。
関連記事:ITインフラの設計とは?構築との違いと流れ・外注のポイントを紹介
構築
設計に基づき、AWSの各種サービスを用いて実際にシステムを構築します。
仮想サーバーの構築・ネットワーク設定・データベース構築・セキュリティ設定など、さまざまな作業を行います。
自動化ツールを活用して効率的に構築を進めるだけでなく、構築後のテストも実施し、設計通りにシステムが動作することを確認します。
関連記事:ITインフラの構築とは?設計との違いと流れ・外注のポイントを解説
運用・保守
システム構築後においては、システムの安定稼働を維持するための運用・保守業務を行います。
システム監視・パフォーマンス監視・セキュリティ監視・障害対応、定期的なメンテナンスなどが主な業務内容です。
24時間365日の安定稼働を維持するため、監視体制の構築や障害発生時の対応手順を整備することが重要です。
また、システムの変更やアップデートにも対応し、常に最適な状態を維持する必要があります。
関連記事:インフラエンジニアの運用保守とは?仕事内容と年収相場・採用のポイントなどを解説
コスト管理
クラウド環境では利用したリソースに応じて費用が発生するため、コスト管理もインフラエンジニアの重要な業務の一つです。
不要なリソースの削除、適切なサーバースペックの選択、予約リソースの活用など、様々なコスト最適化の手法を駆使してクラウドコストの削減に努めます。
また、可視化ツールを活用しコストの発生状況を常に把握することで、予期せぬコスト増加を防ぎます。
【現役インフラエンジニアのひとこと】
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AWSを扱うインフラエンジニアに必要な知識・スキル
AWSを扱うインフラエンジニアには、クラウド特有の知識に加え従来のインフラエンジニアとしての基礎知識も求められます。
さらに、常に進化するAWSの機能をキャッチアップしていくための学習意欲も重要です。
クラウドシステムの知識
クラウドシステムの基礎知識は、当然必須です。
クラウドシステムの概要、仮想化技術、クラウドのセキュリティ、クラウドネイティブなアーキテクチャなど、クラウドに関する幅広い知識が求められます。
クラウド環境特有のメリット・デメリットを理解し、適切な設計・運用を行うために必要な知識です。
AWSの各サービスの知識
AWSは多種多様なサービスを提供しており、これらを適切に理解し活用することが重要です。
コンピューティング、ストレージ、データベース、ネットワーク、セキュリティ、分析、機械学習など、多岐にわたる分野のサービスが存在します。
それぞれのサービスの特性やユースケースを理解し、ビジネス要件に最適なサービスを選択・組み合わせる能力が求められます。
また、新サービスも次々とリリースされるため常に最新の情報にアンテナを張り、学習を継続していく姿勢が重要です。
インフラエンジニアとしての一般的な知識
クラウド環境であっても、インフラエンジニアとしての基礎知識は重要です。
ネットワーク、サーバー、データベース、セキュリティに関する知識はもちろんのこと、LinuxやWindows ServerなどのOSに関する知識、ネットワークプロトコルに関する知識、データベースの設計・運用に関する知識、セキュリティ対策に関する知識など、幅広い知識が求められます。
これらの知識をベースにAWSのサービスを効果的に活用することで、安定したシステム運用を実現できます。
関連記事:【一覧表】インフラエンジニアに求めるスキル15選!資格も紹介
インフラエンジニアが扱う代表的なAWSのサービス
AWSには多種多様なサービスが提供されていることをご紹介しましたが、インフラエンジニアが扱う代表的なサービスを以下に示します。
サービス名 | 概要 |
---|---|
Amazon EC2 | 仮想サーバーを提供するサービス。 |
Amazon ECS | コンテナ(※1)化されたアプリケーションを実行するためのサービス。 |
Amazon VPC | AWS上に分離された仮想ネットワークを構築できるサービス。 |
Amazon S3 | オブジェクト(データ)ストレージサービス。 |
Amazon RDS | データベースサービス。 |
Amazon CloudWatch | 監視サービス。 |
AWS CLI | コマンドラインからAWSのサービスを操作するためのツール。 |
EC2、ECS、VPC、S3、RDSはマネージド型サービスと呼ばれ、AWSがサービスの基盤となるインフラストラクチャの管理を担います。
これにより、利用者はインフラストラクチャの管理ではなくアプリケーションの開発やビジネスロジックの実装に集中できます。
(※1)コンテナ…アプリが動くための環境を一つの箱にまとめることでどこでも同じように動かせる技術のこと。サーバー管理の効率化やシステム管理の自動化ができるメリットがある。
(※2)Docker…アプリケーションをコンテナ化するためのプラットフォームのこと。
(※3)サブネット…ネットワークを効率よく管理するために分けた小さなグループのこと。
(※4)ルートテーブル…データを目的地に届けるための経路を管理する設定表のこと。
(※5)メトリクス…システムやサービスの状態を示す監視データのこと。
インフラエンジニアが保有するAWS認定資格
AWSは、クラウドに関するスキルを証明するためのさまざまな認定資格を提供しています。
これらの資格は、インフラエンジニアのスキルレベルを示す指標として企業の採用活動においても重視されています。
以下の図は、AWS認定資格の全体像です。
インフラエンジニアが一般的に取得を目指す資格に★マークを付けました。これらについてご紹介します。
関連記事:ITインフラ業務におすすめの資格11選!取得へのロードマップ・仕事内容・即戦力の採用方法も紹介
基礎レベル
AWSの基礎知識を証明するレベルです。
AWS認定クラウドプラクティショナー
クラウドの基本的な概念を理解していることを証明する資格です。
クラウドの利点やAWSのサービス、セキュリティ、コンプライアンス、課金モデルなど、幅広い知識が問われます。
この資格保有者は、AWSクラウドに関する基本的な知識を有しており、クラウド導入初期段階のサポートや、基本的な運用タスクを担うことができるでしょう。
アソシエイトレベル
AWSクラウドを利用したシステムの設計・運用・開発に関する実践的なスキルを証明するレベルです。
AWS認定ソリューションアーキテクト ー アソシエイト
AWS環境でのシステム設計・デプロイ(※6)に関するスキルを証明する資格です。
スケーラブルで高可用性、かつ費用対効果の高いアーキテクチャを設計するための知識が問われます。
この資格保有者は、AWS環境におけるシステム設計能力を有しており、中規模システムの設計や、大規模システムの一部設計を担当できる可能性が高いです。
(※6)デプロイ … 開発が完了したアプリやシステムを本番環境に配置し、実際にユーザーが利用できる状態にするプロセスのこと。
AWS認定SysOpsアドミニストレーター ー アソシエイト
AWS環境の運用・保守に関するスキルを証明する資格です。
デプロイ、管理、運用、セキュリティ、トラブルシューティングなど、AWSシステムの運用に必要な幅広い知識が問われます。
この資格保有者は、AWSシステムの運用・保守に関する実務能力を有しており、システムの安定稼働に貢献するでしょう。
AWS認定デベロッパー ー アソシエイト
AWS上でアプリケーションを開発・保守するためのスキルを証明する資格です。
AWS SDK(※7)の活用、セキュリティの確保、最適なサービスの選択など、AWS環境での開発に必要な知識が問われます。
この資格保有者は、AWS環境でのアプリケーション開発能力を有しており、クラウドネイティブなアプリケーション開発を推進できるレベルと言えます。
(※7)AWS SDK…AWSのサービスをアプリケーションに簡単に組み込むための開発ツールキットのこと。
プロフェッショナルレベル
AWSクラウドに関する高度な専門知識と豊富な実務経験を証明するレベルです。
AWS認定ソリューションアーキテクト ー プロフェッショナル
AWS環境でのシステム設計・デプロイに関する高度なスキルを証明する資格です。
複雑なシステム要件に対応するためのアーキテクチャ設計能力、セキュリティ、パフォーマンス、コスト最適化など、幅広い知識と経験が問われます。
この資格保有者は、AWS環境における高度なシステム設計能力を有しており、大規模で複雑なシステムの設計をリードできるでしょう。
AWS認定DevOpsエンジニア ー プロフェッショナル
AWS環境におけるDevOps(※8)プラクティスに関する高度なスキルを証明する資格です。
自動化、監視、パフォーマンスチューニング、セキュリティなど、DevOpsを実践するために必要な知識と経験が問われます。
この資格保有者は、AWS環境におけるDevOpsの実践能力を有しており、システムの自動化や効率化、信頼性の向上を推進できます。
(※8)DevOps…開発と運用のチームが協力して、ソフトウェアの開発から運用までのプロセスを効率化する方法のこと。
AWSを扱うインフラエンジニアを採用する方法
AWSスキルを持つインフラエンジニアを採用するには、大きく分けて正社員の中途採用とフリーランス活用という2つの方法があります。
それぞれメリット・デメリットがあり、自社の状況やニーズに合わせて最適な方法を選択することが重要です。
関連記事:インフラエンジニアの採用が難しい理由と優秀な人材を獲得する方法を解説
正社員の中途採用
正社員の中途採用は、ある程度の経験を持った人材を採用することで教育コストを抑えつつ、比較的早期に戦力化できるメリットがあります。
企業文化への適応や社内ノウハウの共有、チームワークの醸成といった面も期待できます。
また、長期的なプロジェクトへの参画を見込めるため、安定した運用体制の構築に繋がります。
一方で、採用プロセスには一定の期間が必要となる場合があり、人件費などの固定費の発生、社内文化とのミスマッチが生じる可能性なども考慮する必要があります。
フリーランスの活用
近年、AWSの専門スキルを持つフリーランスエンジニアを活用する企業が増えています。
フリーランス活用には、即戦力となる人材を必要な期間だけ確保できるという大きなメリットがあります。
特にAWSのような専門性の高い分野では、正社員採用で即戦力となる人材を確保することが難しい場合も少なくありません。
フリーランスであれば、豊富な経験と高いスキルを持つエンジニアに、プロジェクト単位、あるいは必要な期間だけ業務を依頼することが可能です。
また、正社員採用に比べて採用コストを抑えられる点、必要なスキルセットを持つ人材を迅速に確保できる点もメリットです。
プロジェクトをスムーズに進める上で、フリーランスの活用は非常に効果的な手段と言えるでしょう。
AWSに強いインフラエンジニアを探すならクロスネットワークがおすすめ
この記事では、AWSインフラエンジニアの業務内容や必要スキル、採用方法などについて解説してきました。
オンプレからクラウドへの移行が進む昨今において、パブリッククラウドサービスのトップシェアを誇るAWSを利用したシステムの構築・運用はビジネスの成長に大きく影響するため、適切なスキルを持つエンジニアの確保が不可欠です。
しかし、現実ではそのようなインフラエンジニアの採用が困難であることも確かです。
そこで、より確実性のある方法としてフリーランス人材が注目されています。
AWSに関する十分なスキルと実績を身に付けたエンジニアは、より良い条件や労働環境の改善を目指してフリーランスに転身する傾向があります。
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インフラエンジニア兼Webライター。金融業界の汎用機系エンジニアとしてキャリアをスタート。その後Web系システムのクラウド分野に転向し独立。本職の傍らSEOを学び、ライティングやディレクションの一部業務も経験。得意分野はAWS。