ITインフラの設計とは?構築との違いと流れ・外注のポイントを紹介

ITインフラの設計とは?構築との違いと流れ・外注のポイントを紹介

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新規事業の立ち上げや社内システムの運用において、ITインフラは欠かせない基盤です。長年運用しているITインフラが陳腐化しているため、リニューアルしたい企業も多いでしょう。

しかし「ITインフラの設計って何をすれば良いの?」「既存のITインフラしか扱ったことがないから設計・構築の流れがつかめない」と悩んでいる方もいるかと思います。

そこで、本記事では以下の内容を解説します。

  • インフラの設計でやるべきこと
  • 設計・構築の流れ
  • 設計時の注意点
  • 設計の主な依頼先

本記事を最後まで読めば、ITインフラ設計の概要を理解でき、自社で設計可能か外注すべきかも判断できます。企業の社内IT担当や自社のITインフラ運用でお困りの経営者は、ぜひ参考にしてください。

そもそもITインフラとは

ITインフラとはIT基盤に関わる設備・構成物の総称で、下記の要素で成り立っています。

  • ハードウェア:サーバー、PC、ルーターなど
  • ソフトウェア:OS、ミドルウェアなど

ハードウェアとは、PCやサーバーなどシステムを動かす物理的な電子部品のことを指します。ソフトウェアはハードウェア上で動くプログラムのことで、WebアプリやOSの他、ソフトウェアとハードウェアの間で動くミドルウェアもその一種です。

近年は働き方改革、生産性向上のためのDXなどの影響でITインフラは拡大傾向にあります。下の表は経済産業省が推進している「DX認定制度」を活用した企業数の推移です。2023年から2024年の間で認定事業者が約1.5倍に増加していることから、ITインフラのニーズが高まっていると言えるでしょう。

出典:経済産業省

また既存のITインフラが老朽化している企業も多く、刷新の動きも活発です。

ITインフラの整備が疎かだと、システム障害、セキュリティリスクの増大、生産性の低下などが懸念されるため、入念な設計が求められます。

ITインフラの設計とは?

ITインフラの設計とは、ネットワークやサーバーなどのインフラを安定して構築、運用するために必要な要素を定義することです。後に紹介する要求定義で汲み上げたニーズを実現するための枠組みと言えます。料理にたとえるならレシピ作成と考えて良いでしょう。

設計は主に基本設計と詳細設計に分かれます。

  • 基本設計:ITインフラ構築に必要な機能・構成などを固める
  • 詳細設計:基本設計を受けて構築するための内部構造を決める

ITインフラ設計は企業活動のベースになるだけでなく、情報管理にもおおきな影響を与えるため、非常に大切な業務です。そのため、インフラエンジニアの需要も伸びており、とくに即戦力となる人材が求められています。

設計フェーズでやるべきことは「ITインフラ設計・構築の流れ6ステップ」で詳しく解説します。

要求定義・要件定義との違い

設計と混同されやすい要求定義と要件定義ですが、それぞれの意味を下の表にまとめました。

要求定義

依頼者にどのようなシステムニーズがあるのか、現状の課題と理想像を元に明確化すること

要件定義

要求定義で汲み取った開発ニーズをシステムでどう実現するか必要な機能を洗い出すこと

設計

要件定義を元にITインフラを構築するための枠組みを作ること

上の表のように、ITインフラ構築は要求定義→要件定義→設計の順番で工程が進むため、各フェーズが同時進行することは原則ありえません。ただし、小規模な開発になると隣同士のフェーズに明確な境界が定義されないこともあります。

構築との違い

構築とは設計で取りまとめた方向性を実現することで、料理でいうと調理に当たります。ネットワーク構築なら、機材の搬入・設定、配線工事、プログラミングが必要です。サーバーならパスワードやSSLまどのセキュリティ設定が構築の一つに該当します。

設計が疎かだと、構築したITインフラがニーズを満たせなかったり障害につながったりする恐れがあります。また、万が一トラブルが発生したときに被害を最小限に抑えられるよう、事故や不具合を想定して構築しなければいけません。

ITインフラで主に設計するもの3つ

ここではITインフラで設計するものを3つ紹介します。

  • ネットワーク
  • サーバー
  • セキュリティ

どれも欠かせない構成物なので、詳しく解説します。

1. ネットワーク

ネットワークとは複数のデバイスをつなぐ技術や状態のことです。

設計のときにはPCやタブレットなどの端末の他、LANケーブルやルーターなどのネットワーク機器といった必要な機材を決めなければいけません。

ネットワークで主に設計する要素は以下のとおりです。

ネットワークで設計する要素

概要

トポロジ

コンピューターや関係デバイスの接続スタイル

サブネットワーキング

ネットワーク内にある小規模ネットワークの

プロトコル

データをやり取りするためのルール

ロードバランサ

通信量を分散させて処理のバランスを調整

VPN

ネットワーク同士を安全につなぐ仕組み

かつては有線のネットワークが主流でしたが、Wi-Fiの誕生により無線ネットワークが急速に普及しました。DX化も後押ししていることから、無線ネットワークの設計に重きを置いている企業が増加しています。

2. サーバー

サーバーとは何かの要求(リクエスト)に関して返答をする機器やシステムのことです。たとえば、見たいサイトのボタンをクリックしてページが表示されるのも、サーバーが受け答えしているからです。

サーバーを設計するときには使用人数、用途(アプリサーバー、メールサーバーなど)、障害耐性、予算などを検討します。

3. セキュリティ

どのようなITインフラを構築するにせよ、セキュリティ設計は欠かせません。企業秘密や顧客情報など多くの情報が電子的に管理されており、悪意ある第三者が攻撃を試みているからです。

総務省が作成した以下のグラフはNICT(情報通信研究機構)が観測した情報通信関連の攻撃数の推移で、2018年~2021年の間で2.4倍に増えています。

出典:総務省
セキュリティが疎かだと、機密情報の漏えいやサービスの停止などの被害に遭うでしょう。そうなると多大な損失を被るだけでなく、自社の信用失墜にも直結します。

セキュリティ設計では、下記の要素が漏れていないかチェックしましょう。

  • 認証:通信相手が誰であるのかをチェックする手段
  • 脆弱性管理:攻撃に悪用されるシステムの弱点を管理
  • 暗号化:データを変換して第三者からの傍受を防ぐ

ITインフラ設計・構築の流れ6ステップ

ITインフラは大規模かつ複雑になりやすいため、設計ではいくつもの工程を踏みます。ここではネットワーク構築を例に設計の流れを解説します。

  1. 企画(要求定義)
  2. 要件定義
  3. 設計
  4. 構築
  5. テスト
  6. 運用・保守

1. 企画(要求定義)

ネットワークを構築する理由や背景を具体化しましょう。たとえば「新しい事業所を開設するためLANを構築したい」「働き方改革の一環でリモートワーク環境を導入したい」といった形です。

また、企画段階で設計、構築、テストなどの各ステップで大まかなスケジュールを決めます。企画で固まった内容は要求定義書(外注の場合は提案依頼書)にまとめましょう。要求定義書でまとめる内容の例を下に記載していますので、参考にしてください。

要求定義書に盛り込む項目

内容

ネットワークの概要

構築背景と目的

解決したい問題

現行ネットワークの概要

ネットワークの利用者

予算

依頼事項

ネットワークの構成・性能

納期

納品条件

開発体制

プロジェクトの管理方法

開発手法

費用見積もり

構築の条件

期間

作業場所

開発に使う端末

資料

契約事項(外注の場合)

支払い条件

保証年数

機密事項

2. 要件定義

企画でネットワーク構築のニーズが固まったら、要件定義でそれらを実現するための方法と機材を洗い出します。新しい事務所の開設を例に挙げると、執務室に置くPCの台数やスタッフ用PCの外部接続の可否などを決めます。 

ネットワークの要件を固めたら、必要なデバイスと仕様をまとめましょう。「VPN機能付きのルーターを5本」「8ポートのLANスイッチを3台」というように、機能と台数まで細かく決めます。要件定義までのフェーズは設計において重要な要素です。ここが疎かだと、設計・構築段階で不備が発覚して手戻りを迫られます。

3. 設計

要件定義が終わったら設計に移行します。設計は基本設計と詳細設計の順にステップを踏みます。

基本設計

出典:沼津高専 電子制御工学科
基本設計では、要件定義を元に対象のデータや必要機能を明らかにし、上の図のよう骨組みを決めます。主な項目と成果物は以下のとおりです。

基本設計の主な項目

概要

成果物

システム設計

システムを構成するソフトウェア・ハードウェア・ネットワークなどを定義

ネットワーク構成図

システム構成図など

画面設計

要件定義で固め画面レイアウト遷移図などを明確にしたもの

レイアウト

画面一覧

遷移図

入出力項目など

帳票設計

要件定義で固めた帳票のレイアウト・帳票一覧などをより具体化し、アウトプットをまとめたもの

レイアウト

帳票一覧

出力項目一覧など

バッチ設計

あらかじめ登録した処理の流れをまとめたもの

処理一覧

処理フロー

処理定義など

データベース設計

データの中身やデータ間の処理をまとめたもの

ER図

テーブル一覧

ファイル一覧

詳細設計

詳細設計は、基本設計で定義した仕様を構築用に具体化した枠組みです。外注だと依頼側が関与することはあまりなく、内製化においてもエンジニア主導で動きます。

4. 構築

詳細設計が完了したらネットワーク構築に進みます。企画で決めたスケジュールにあわせて機材搬入、配線、各種設定を行います。

なお、構築のときには他の業務の妨げにならないよう、関係各所への通達を忘れないようにしましょう。最低でも1か月前までに通知することをおすすめします。

5. テスト

構築が終わったらネットワークが設計通りに機能するかテストします。テストは以下の2ステップに分けて行われます。

テストの種類

概要

確認項目の例

単体テスト

装置単体で動くかテスト

ルーターの電源ランプは点くか

無線APに接続できるか

システムテスト

装置を連携させてネットワークが正常に働くかテスト

LANスイッチに接続したデバイスから外部ネットワークにアクセスできるか


指定のデバイスから機密情報を扱うサーバーにアクセスできるか


不審なアクセスを遮断できるか

単体テストでは、ルーターの電源やネットワーク開通など単一の機能の確認をします。

システムテストでは、単体テストをクリアした機器同士で連携をチェックし、要求定義と要件定義を満たしているか確認しましょう。また、何をもってテストが成功したとみなすか、共通認識を持っておくことも大切です。

6. 運用・保守

ネットワークを構築したらそれで終わりではありません。一定のパフォーマンスで稼働させるためには運用・保守が必要です。

運用とはシステムを継続稼働させるために、管理・監視すること。保守はシステムの老朽化や不具合発生のときに、機器の取り換えやプログラム改修などを行うことです。ネットワークを初め、ITインフラは数年~十数年単位で運用されるケースは珍しくありません。その間、セキュリティへの新たな脅威や機器の老朽化も想定されるため、運用・保守は必要不可欠な業務です。

ITインフラ設計の注意点3つ

ITインフラを設計する際の注意点を3つ紹介します。

  1. 設計目的を明確にする
  2. 時間に余裕をもった計画を立てる
  3. 拡張の余地をもたせる

見落としがちな視点なので、ここで押さえておきましょう。

1. 設計目的を明確にする

自社でITインフラを設計する目的を明確にしましょう。

設計目的があいまいだと、完成できたシステムが使い物にならない、オーバースペックで予算を無駄にする、ということがありえます。とくに開発者と使用者が異なると、設計目的に認識の差が出ることも珍しくありません。

できればシステムの使用者(経理システムなら経理担当者、工場のDX化ならオペレーターなど)をプロジェクトチームに加えましょう。設計を含め、上流工程で方向性を誤るリスクを避けられます。

2. 時間に余裕をもった計画を立てる

余裕のない設計スケジュールは、ITインフラの品質低下や工期遅れの原因になります。

たとえば、必要な構成要素を洗い出しきれないと機能不足なシステムができるかもしれません。災害やスタッフの人事異動などイレギュラーが起これば、予定通り工事が進まなくなる可能性があります。

各ステップで予備日を設けるよう、ゆとりのある計画を立てましょう。

3. 拡張の余地をもたせる

構築時のスペックでITインフラをずっと運用するケースはまれです。サーバーの増築やアプリケーションの統廃合など、拡張することはよくあります。

機材やサーバーの予備を確保し、拡張・更新にスムーズに対応できるようにしましょう。

ITインフラ設計の依頼先3つ

ITインフラの主な依頼先について解説します。

  1. 社内IT部門(内製化)
  2. 開発会社
  3. フリーランスエンジニア

それぞれにメリットデメリットがあるので、自社にあった依頼先を見つけましょう。

1. 社内IT部門(内製化)

メリット

デメリット

意思疎通がしやすい

設計ノウハウが蓄積される

緊急の案件にも対応できる

エンジニアによってスキルに差が出る

育成の手間がかかる

人件費がかかる

社内のエンジニアに任せるのはオーソドックスな方法で、内製化とも呼ばれます。自社のエンジニアは社内文化に精通しているため、コミュニケーションコストが少なくなります。ノウハウも蓄積されるため、後世への技術継承や他部署への水平展開もしやすくなるでしょう。

また、システム障害や機器の故障などトラブルが発生しても、自社のエンジニアなら直接対応できます。

しかし一方で、自社のエンジニアだと未経験の新卒からベテランまで幅広い人材がいるため、設計品質に差が出る傾向にあります。未経験を育てるのも時間とお金がかかるため、育成の労力に見合わない企業も少なくありません。

また、自社でエンジニアを雇用すると、給与の他に社会保険、福利厚生費用、退職金などのコストも発生します。そのため「コストや時間をかけてでも設計技術を保有したい」「長期的な目線で人材を育てたい」という企業に内製化はおすすめです。

2. 開発会社

メリット

デメリット

育成の手間がかからない

設備投資が不要

自社にはない知見を得やすい

外注費が高額

開発ノウハウが貯まりにくい

コミュニケーションコストがかかる

開発会社へ外注するのも有効な手段です。

インフラエンジニアは高度な知識、技術が求められるため即戦力を見つけるのが難しく、未経験者を育てるのも時間がかかります。しかし、開発会社に外注すれば人材を確保・育成する手間を省けます。人材だけでなく、設備や機材など構築環境の準備を開発会社に任せられる点も魅力です。

また、開発会社によっては業界を跨いでITインフラ構築を受注しているため、自社にはない知見も得られるでしょう。

ただし、開発会社に外注すると費用が高額になります。とくにITインフラは複雑かつ大規模になりやすいため、ゼロから構築すると1,000万円を超えるケースは珍しくありません。自社にノウハウを蓄積できない点もネックです。要求定義や設計などの上流工程では顧客側も関わりますが、設計以降の下流工程は開発会社に委ねられます。どのように構築しているか不明瞭なため、開発会社への依存度が高まることに注意が必要です。

また、自社の人材よりコミュニケーションコストがかかる傾向にあります。開発会社のチームとやりとりする場合、プロジェクトマネージャーや営業窓口を挟むケースが多く、内製化に比べるとスピードが落ちます。

3. フリーランスエンジニア

メリット

デメリット

人員を調整しやすい

新しい知見・技術を導入しやすい

コストを抑制できる

人材の質におおきな差がある

インフラ設計の即戦力を求めるならフリーランスエンジニアは有力な手段です。フリーランスエンジニアはプロジェクトごとに契約するケースが多いため、必要に応じて人材を確保できる点が魅力です。とくに突発の案件が発生した際に募集をかけやすくなります。

また、フリーランスエンジニアの多くは特定のスキルを生かして多様な会社、業界を渡り歩いています。そのため、自社にはない知見やノウハウを得やすいのも特徴です。そしてフリーランスは社会保険、福利厚生費などの費用が発生しません。特定のスキルをもった人材なので教育の手間もなく、雇用するよりコストを抑えられるでしょう。

一方、フリーランスエンジニアは人材の質におおきな差があるため、自社にあった人材を見つけることが大切です。

関連記事:インフラエンジニアの需要が高い理由と優秀な人材の獲得方法を解説

ITインフラ設計を依頼するならクロスネットワークがおすすめ

本記事ではITインフラの設計とは何か、設計の流れと注意点、依頼先などについて解説しました。ITインフラは企業活動のベースになるシステムで、ITインフラの質がそのまま事業の生産性向上に直結します。

しかし自社での設計が難しく、ここまで読んで「プロに外注したほうが良さそう」と考えている方も多いでしょう。

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喜多村道秋
記事を書いた人
喜多村道秋

新卒で大手インフラ企業に入社。約12年間、工場の設備保守や運用計画の策定に従事。 ライター業ではインフラ構築やセキュリティ、Webシステムなどのジャンルを作成。「圧倒的な初心者目線」を信条に執筆しています。